No.18[暁光]

No.18[暁光]
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──ある日の冬の寒空の下。



カンタとノザキは、初詣で神社に参拝に来ていた。


こぢんまりとした神社のためか、参拝者はこの二人だけで、境内は静まり返っている。







ノザキ「⋯⋯⋯誰もいないな」


カンタ「⋯ですね」




リュックを背負い直しながら歩くカンタ。







カンタ「僕たち、いつもは何かこう⋯
ファンタジーなものを運んで回ってますけど⋯⋯
こういう日本的なのも、いいですよね」




ふふっ、と笑ったカンタの息が白い。




ノザキ「⋯⋯確かに」



納得したように、深く頷くノザキ。




そんなやり取りをしつつ、賽銭箱の前に立ち、お賽銭を入れる二人。

並んで手を合わせて目を瞑り、暫し沈黙の時間が流れる。









──ゆっくりと目を開けたカンタは、一礼して振り返った。




カンタ「うわっ!!」




振り返った先、すぐ目の前に人が立っていて思わず飛び退くカンタ。

彼の反応に、その人物は驚いて目を見開いた。





「っ!

⋯⋯き、君⋯
私が、視えるのかい?」


カンタ「⋯え⋯?」






よく見ると、その人物は不思議な出で立ちをしている。


煌びやかな神職服のような格好に、白銀の長い髪、瞳は内側から輝くような金色だ。

しかも、身体が少し半透明に見える。


その様相と、自分が視認されたことに驚いた相手の反応から、カンタは「人ならざる者」だと気付く。







カンタ「───あ、あの⋯⋯

もしかして、あなたは⋯
人じゃない存在、ですか?」




目を見開いてこちらを見ていたその人物は、ハッとして、穏やかな笑顔を見せた。





「あ、あぁ。

⋯私の名は、暁。
とある御方の眷属だ」





「暁」と名乗るその存在は、カンタを興味深そうに見つめる。





暁「私が視えるなんて⋯
君、相当能力が強いね」


カンタ「え⋯?
そ、そう、なんですかね⋯
⋯⋯あ、ノザキさんは⋯」


ノザキ「視えてる」


カンタ「⋯⋯⋯⋯(^^;)」




至って冷静なノザキに、カンタは苦笑いを浮かべて若干引きつつ、暁に視線を戻す。





──暁は、カンタのリュックを凝視していた。






カンタ「⋯⋯あ、暁さん⋯?」




名前を呼ばれた暁は、カンタに視線を移す。





暁「君⋯
何やら、不思議なものを持っているね。
人間界のものではない⋯

それは⋯何だい?」




そう言って、暁は再びカンタのリュックを凝視した。


「人間界のものではない」という暁の言葉に、カンタは彼が何を見ているのかに気付く。





カンタ「リュックの中身⋯分かるんですか?」




その問いに、暁は優しく微笑む。





暁「私は、物体のエネルギーを読むのが得意でね。
君が持っているそれが何かは、正確には分からないんだが⋯
人間界のものでないのは確かだ。

⋯そんな不思議なエネルギーは、初めて見たよ」




興味津々といった様子で目を輝かせ、なおもカンタのリュックをまじまじと見つめる暁。


カンタは、暁のその様子が何だか可愛らしく見えてクスッと微笑みつつ、リュックを開けて中から標本瓶を取り出した。





カンタ「これは、「ガラスタケ」っていうキノコで⋯
ある人から預かったものなんです。
暁さんの言う通り、人間界のものじゃなくて、妖精界のものです。

実は僕たち⋯こういう不思議なものを世界中に運ぶ「運び屋」をしてるんです」


暁「妖精界⋯」




暁は、カンタの取り出したガラスタケを、目を見開いて凝視していたが、ハッと我に返り、穏やかな笑みを浮かべた。





暁「ありがとう。
⋯見れば見るほど、不思議なエネルギーだ。
これは、人間界の理[ことわり]の「外」にあるものだね。

─だとすると、この世界においてそれは「異物」として、存在を保てず⋯いずれ自然消滅してしまうのではないかい?」




ガラスタケを心配そうに見つめる暁に、カンタはニコッと笑いかける。




カンタ「普通はそうなるんだと思います。

⋯でも、今から僕たちがこれを届ける[白夢製作所]っていう所にいるノアさんなら、こういう不思議なものを「具現化」っていう能力で、この世界に存在させ続けられるんです」


暁「⋯⋯具現化⋯」




カンタの話を真剣に聞く暁。

ふと、何かを思いついたかのように顔を輝かせた。






暁「その[白夢製作所]⋯には、今から行くと言ったね?」


カンタ「え?は、はい」


暁「⋯⋯私も、同行させてはくれないだろうか」


カンタ「⋯⋯⋯えっ!?」



暁の突然の申し出に戸惑うカンタ。
どうしたものか、と、ノザキに視線を送る。





カンタ「ノザキさん⋯⋯どうしますか」


ノザキ「⋯⋯別に、連れて行ってもいいだろう。
どうせあの製作所は、元々いろんなやつがいる。
誰が来たって驚かないだろ」


カンタ「そ、そう、ですね⋯⋯」



小さく頷いたカンタは、暁に向き直ってフワッと笑った。





カンタ「じゃあ、一緒に行きましょう、暁さん」


暁「⋯ありがとう」





そうして、カンタとノザキは、暁という謎の存在を連れ、白夢製作所へと向かうことになった。












───数時間後、地図を片手に、ようやく三人は白夢製作所の前まで辿り着いた。

既に日も暮れ、空には星が見え始めている。





ノザキ「⋯⋯はぁ。
ここは、何で毎回場所が変わるんだ。
しかも、道に迷わないと辿り着かないなんて⋯
地図の意味ないだろ。
面倒すぎる⋯」



製作所への奇怪な道のりに文句を言うノザキ。




カンタ「まぁまぁ⋯⋯
毎回のことじゃないですか」


ノザキ「[毎回のこと]だからだ。
どうにかならないのか、この仕組み⋯」


暁「⋯⋯不思議だね。
世界の「境界線」にあるような場所だ」




二人の話をよそに、目の前に建つ製作所を興味深く眺める暁。





カンタ「[境界線]⋯?それって⋯」


暁の一言が気になったカンタがそれを問うが、疲弊した様子のノザキがカンタと暁の背中を押した。



ノザキ「とりあえず、中に入ろう」


暁「っ!
今⋯私の背中を、押したね?」



背中を押された暁が、とても驚いた様子でノザキを見る。

暁のあまりの驚きように、困惑するノザキ。




ノザキ「⋯背中を押したらダメなのか?」


暁「あ、いや⋯
そういうことではないんだ。

ただ⋯なぜ君が[私に触れることができたのか]と、驚いてね。
私は、物質ではないから」


そう言いつつ、指先を動かしてそれを不思議そうに見つめる。




暁「⋯何だろうか、この感覚は⋯」


カンタ「⋯⋯⋯あ、もしかして」



何かに気付いたカンタが、人差し指を立てた。




カンタ「多分、ノアさんの[具現化]の能力で、製作所の敷地に入った暁さんも今、この人間界に物質として[具現化]したんだと思います!」


ノザキ「⋯でも、変だな。
まだ若干透けて見える」




ノザキにそう言われ、カンタが暁をよく見ると⋯
確かに、[具現化]したであろう暁の身体は、なぜかまだほんの少し透けている。





カンタ「ん~、何で⋯?」


ノザキ「まぁいい。とりあえず、ノアに会わせたら分かるんじゃないか?」


カンタ「⋯そうですね。ここで考えてても仕方ないし、中に入りましょう。
鍵は、開いてるはず⋯」



そう言って、カンタは製作所の鉄扉をゆっくりと開けた。


彼らが事前に来ることを知ってか、鍵は開けてあったようだ。







─製作所の中は、静まり返っていた。


鉄扉の閉まる重い音だけが、製作所内に響く。







カンタ「⋯⋯誰もいない、ってことはないはず⋯」


ノザキ「⋯⋯?
庭の方から、話し声が聞こえる」




製作所内突き当たり、右奥の勝手口から、声の聞こえた庭に出てみる三人。






──そこでは、いつにも増して賑やかな光景が広がっていた。



所長のノア、
その助手のイーユンとロカ、
アーネスト博士と、風の妖精シルフ─

それに加えて、
ノアの双子の兄弟で黒夢製作所所長のニア、
助手のルカイン、
ランプの精霊ミコールと、
用心棒の悪魔ヴォルド。


「人種のるつぼ」ならぬ「種族のるつぼ」と化した庭では、各々好きな飲み物を手に、様々な洋菓子が並べられたテーブルを囲んでガヤガヤしている。




─と、ヴォルドを見た暁の纏う雰囲気が、瞬時に鋭いものに変わった。





暁「⋯っ!貴様、鬼か」


ヴォルド「あぁ?誰だコイツ」




穏やかだった空気が、一気に張り詰める。



事情が分からない状態の中、ノアがすかさず仲介に入った。




ノア「彼⋯ヴォルドは鬼ではなく、悪魔です。
私の双子の兄弟─そこにいるニアの、用心棒をしている使い魔なんです」


暁「⋯使い魔⋯⋯
式神のようなものか⋯」


ノア「そうですね、そんなところです。

⋯⋯あの、あなたは⋯?」



その謎の人物を連れてきたであろうカンタとノザキに、チラッと視線を送るノア。





カンタ「あ、この人は⋯
えっと、神社で出会った暁さんです。
何でも、ある方の眷属?をしてるとか⋯」


ノア「眷属⋯?」



ノアが頭の上に「?」を浮かべていると、ノザキが呆れたようにため息をついた。




ノザキ「で、何なんだ、この集まりは」



ノアはその様子にクスッと笑い、事情を説明する。




ノア「実はちょうど、夜のティーパーティーを始めたところなんです。

ニアとルカインは、陽の光に当たれないので⋯
夜に開催しようって話になって」



ニアは、何やら赤いハーブティーのような飲み物が入ったグラスを飲み干し、暁を見てニヒルな笑みを浮かべた。




ニア「そゆこと。

──ていうか、さっきから気になってるんだけど⋯
その暁って人、半透明に見えるの、僕だけ?」


ノア「⋯⋯⋯⋯え?」



きょとんとするノア。

しかし、ノア以外は全員暁が少し透明、もしくは半透明に見えているらしく、口々にニアに同意する。


困惑したノアは、とりあえずアーネスト博士に助言を求めた。





ノア「博士⋯これは、どういう状況だと思いますか?」


アーネスト「ふむ⋯⋯」




彼は顎に手を添えて暫し考えた後、身振り手振りをつけて、物理学者ならではの独自の推論を展開する。





アーネスト「もしかすると─
暁君は、我々の知覚できる帯域を遥かに超えた、高い周波数の存在かもしれないな。

この白夢製作所という空間自体が、ノアの能力によって現実と別次元の境界が曖昧な、一種の「次元の結節点」だ。

暁君がそこへ足を踏み入れたことで、君の具現化能力が暁君に干渉し、彼の周波数をこちらの世界へと引き込んだ。

しかし、完全には同調しきれていない。
例えるなら、テレビの選局がわずかにズレて、ノイズ混じりの映像が映し出されているような状態だな!

しかし、ノアはそのノイズをもろともしない程「視る」力が強い─
いわゆる[チューニング]できる故、暁君がハッキリと見えている、ということだろう。

彼はまだ「こちらの世界の法則」に完全には組み込まれていない、確率の揺らぎの中にいる存在なのだよ。

─そこでだ!

不確定な存在をこの世界に[具現化]する能力を持つノアが、彼という不確定な波動に直接触れることで、君の持つ「現実の質量」が彼へと伝播し、同期[シンクロナイズ]─
物理学的に言えば「強力な相互作用」を発生させ、彼のアウトラインをこちらの次元に完全に「固定」させる。

そうすれば、ここにいる全員に見える状態で顕現されるはずだ!」




『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』





アーネストの熱弁に、その場が静まり返り、全員がポカンとしている。







ニア「⋯⋯⋯どゆこと?」


アーネスト「つまり、ノアと暁君が物理的に直接接触すれば、他の皆にも完全に見えるようになるかもしれないということだ」



先程の熱弁とは対象的な、あまりにも簡潔なまとめに、ニアは盛大なため息をついた。





ニア「はぁ~⋯

初めっからそう言ってよ。
爺さんの説明、ムズいし長すぎ」


アーネスト「誰が爺さんだっ!全く⋯」



そうは言いつつも、アーネストは楽しそうだ。

彼は、戸惑うノアと暁に、ニカッと笑いかけた。





アーネスト「せっかくだから、握手を交わすことで接触してはどうかね」


暁「握手⋯?

あ、あぁ⋯
ノアさん、といったかな。よろしく頼む」



そう言って、慣れない様子で左手をノアの前に差し出した暁。

それを見てハッとしたノアは、微笑みながら言いづらそうに、暁のその挙動について言及する。





ノア「あ、暁さん⋯
えっと⋯⋯
握手は、右手で求めた方がいいかもしれません。

人によっては、左手の握手は「敵意」として捉えられてしまうこともあるので。
あ、私は気にしてないので大丈夫ですよ(^^)」



そう指摘された暁は、慌てて左手を引っ込めて右手を差し出した。




暁「す、すまない。
握手という挨拶は初めてで、勝手が分からず⋯」


ノア「いえいえ、どうぞお気になさらず」



二人が握手を交わした瞬間、暁の姿が完全に見えるようになり、皆口々に「おぉっ」と声をあげる。
その結果に、アーネストは大きく頷き満足気だ。



その中で、若干呆れ気味のニアが肩をすくめた。





ニア「⋯⋯ていうかさぁ、ノア。
その人が握手で挨拶するのなんて、どうせ今回ぐらいだろうし、そんなことわざわざ言わなくても良かったんじゃない?」


ノア「⋯あ⋯そうだね。
すみません、暁さん」


暁「いいや、こちらこそ⋯」


ノア「いえいえ、私の方こそ⋯」



何やら終わりそうにない謝り合いに、見かねたアーネストが割って入る。





アーネスト「ところで、暁君は、神社でカンタ君たちと出会ったということだが⋯
何か目的があって、そこにいたのかね?」


暁「⋯あぁ。
私は、ある使命を果たすため、全国を巡っている。
その道中、彼らに遭遇したんだ」


ノア「使命?」




暁は、一つ頷き、真っ直ぐにノアを見据えた。





暁「[この世界に、ご神気を広める]─
それが、私が担っている使命」






ノアの隣に立っていたニアが、暁の発した「ご神気」というワードに、訝しげな顔をする。





ニア「[ゴシンキ]って⋯
響きからして怪しくない?何なのそれ。宗教?
そういうの、苦手なんだけど」


暁「⋯いや、宗教ではないのだが」




苦笑いを浮かべた暁は、目を伏せて暫し考え込んだ後、視線をニアに戻した。




暁「そうだね⋯
君たちに分かりやすく言うならば─
「清浄な気」。
世界を生み出した、純度の高い光⋯
[宇宙の始まりのエネルギー]、とでも例えようか。

そのエネルギーを、爽やかな風のように感じる者もいる」



暁は、少し悲しげな笑みを浮かべて僅かに首を傾げた。




暁「その「ご神気」という言葉を、私利私欲の道具として利用し、悪巧みをする者も少なからずいてね。
怪しいと思われる原因にもなっている。
君がそう感じるのも無理はない。

だが本来、それは誰もが自然の中で無意識に存在を感じられるエネルギー。
一部の者だけが恩恵を受けたり、独占するものではないし、できるものでもない。

しかし──」



暁は目を伏せて小さくため息をつき、再び目線を上げた。




暁「その「気」が、今の人間界では枯渇している。
原因はいくつかあるが、生活様式の変化によって自然から離れたことが大きな要因だろう。

人は元々、自然と共に生きていた存在。
森羅万象への「敬意」と「愛」があった。
今、その心が失われつつある。

自然からの気が枯渇すると、人間は「不自然」な存在となっていく。
不自然な存在は、この地球にとって不自然な結果をもたらす。

私が仕える御方が守ろうとしているのは、
この大地─
そして、この地球。

人間たちに「気」を巡らせ、自然な存在に戻すことが、ひいてはこの地球を存続させることに繋がるんだ」








暫しの沈黙の後、暁は穏やかに微笑んで、再び口を開く。




暁「自然界には、既に「気」が満ちている。
気を広めるべきは人間界。
つまり、エネルギーを込めるものは、人間の側に常にあるものや、身に付けるものが最も望ましい」


ニア「ふ~ん⋯
じゃあ、人間が持ってるものに片っ端からその[ゴシンキ]を入れてったらいいじゃん」



ニアの提案に、暁は困ったような笑みを浮かべ、僅かに首を傾げた。




暁「ご神気というエネルギーは、器を選ぶエネルギーでね。
何にでも宿せるというわけではないんだ。
何と説明すればいいかな⋯

人間が生み出したものについては─
「純度の高い」ものでないと、エネルギーが定着しない。

全く心が込められていないもの、負の思いを元にして作られたものは、エネルギーの性質が違いすぎて、水と油のようにお互いを弾いてしまう。

つまり、性質の近いもの⋯
我欲の無い、純粋な[祈り]のような思いで生み出されたものにこそ、ご神気は宿せる。

私は、その器になり得るものを探しているんだ」






小さくため息をつき、目を伏せて黙り込む暁。



─と、シルフが唐突に話しかけてきた。





シルフ「ノアちゃんの作品に、そのエネルギーを込めればいいんじゃない?」



その言葉に、暁は視線をフッとノアに向けた。



暁「⋯⋯⋯ノアさんの、作品⋯?

もしよければ、それを拝見してもいいだろうか」


ノア「あ、はい、もちろんです!
ちょっと待っててくださいね」



そう言って、ノアは一人、勝手口から製作所内へと入っていった。









──数分後、いくつかの作品をアンティークなトレーに乗せて、皆のいる庭に戻ってきたノア。




ノア「今手元にあるのは、この子たちぐらいですね」


暁「⋯⋯⋯⋯」




暁は、トレー内の作品たちをじっと見つめ、暫し沈黙した後、感心したように頷いた。




暁「⋯⋯ノアさんの作品は、十分な[器]だ。
しかし⋯

既に、別の不思議なエネルギーが宿っている」


ノア「⋯⋯⋯⋯⋯?」




暁の言葉に、きょとんとするノア。


その様子を見ていたシルフが、クスッと笑いながら、ノアに近付いた。






シルフ「ふふっ、やっぱり気付いてなかったのね。

ノアちゃん⋯あなた、ただ作品だけを世に送り出してるわけじゃないのよ。

あなたの作品には─
あなたを媒体として、いろんな世界の「エネルギー」が込められているの。
妖精界と宇宙のが多いけどね。
そうして、いろんな人の所に、作品と一緒にエネルギーを届けてるの。

──それこそが、あなたの[具現化]の能力の真髄。
そして、その能力を持ってる理由でもある。」



ノア「⋯⋯⋯⋯」




それを聞いて唖然とし、言葉を失うノアの代わりに、苦笑するアーネストがシルフに問う。





アーネスト「⋯⋯シルフ。
なぜ、そんな大事なことを、今まで教えてくれなかったのだ」







少しの沈黙の後、瞬いたシルフがその問いに答えた。




シルフ「そうね⋯
今までは「伝える必要がなかった」からかしら。

ふふっ、物事には、伝えるべきタイミングがあるの。

⋯⋯ノアちゃん。
作品を作ってる時の感覚⋯独特でしょ」




ノアは、「なぜ知っているのか」といった様子で、驚いて目を見開く。




ノア「⋯⋯そうですね。
製作中は、何というか⋯

[自分]が消えて透明になって、世界に広がって溶けていく感覚、でしょうか。
⋯あ、作品のイメージに合わせて、祈りを込めて製作したりもしてます。

う~ん、言語化が難しい⋯」




それを聞いたニアが、先程のノアとそっくりな反応を示す。




ニア「え⋯⋯⋯ノアも?」


ノア「⋯⋯え⋯じゃあ、ニアも⋯?」



同じ顔で同じような表情を浮かべ、顔を見合わせる二人に、シルフはクスクスと笑って瞬いた。





シルフ「その時の二人はね、[エネルギーの導管]になってるの。
だから、[自分]が一時的になくなって、純粋な導管として、作品にエネルギーを宿してる」




呆気に取られている二人の心の内を察したかのように、シルフは説明を続ける。





シルフ「大丈夫。
作品を受け取っても、エネルギーを受け取りたくないって無意識に思ってる子には、何の作用も起こらないから。

それに、作品に宿ったエネルギーが悪さをすることはないわ。
一時的な好転反応はあるかもしれないけど。

それを受け取った子が必要なタイミング、必要な形で発動する─
時限爆弾みたいなものよ」


ニア「じ、時限爆弾って。例えが物騒⋯笑」



ニアの言葉に、楽しそうにクスクスと笑ったシルフは、暁のそばにフワリと近付いて瞬いた。






シルフ「ねぇ、ノアちゃんとニアちゃんの作品に、暁ちゃんのエネルギーも一緒に込めたらいいんじゃない?」



そのシルフの提案に、首を傾げるニア。



ニア「え⋯
もう別のエネルギー入ってるのに、さらに入れられるの?」


シルフ「ふふっ⋯ええ、入るわよ。
物質みたいな制限はないもの。

暁ちゃん、試してみて」


暁「⋯あぁ。
ノアさん、作品に触れてもいいかい?」


ノア「っあ、はい!どうぞ」



彼らの会話を静かに聞いていたノアは、突然声をかけられ、ハッとしてトレーを暁の前に差し出した。




暁「では⋯失礼するよ」





暁が作品にそっと触れる。


──すると、暁の指先に白金色の優しい光が現れ⋯
作品へと吸収されるようにゆっくり消えた。






シルフ「⋯⋯ね。入ったでしょ?」


ニア「⋯へぇ⋯!あれが、[ゴシンキ]⋯」



ニアの反応が面白かったのか、クスッと笑うシルフ。



その隣にいた暁は、懇願するような眼差しでノアとニアを見つめた。





暁「この出会いも何かの縁。
ぜひ、私たちの使命にご協力願いたい」


ノア「もちろんです。私でお役に立てるなら。
⋯⋯ニアは?」


ニア「ん~、別にいいけど。
てか、[私たち]って、他にも誰かいるの?」



怪訝な顔のニアに、暁は優しく微笑みかける。




暁「眷属仲間に「宵月」という者がいてね。
彼も、仕える御方は違うが、私と同じ使命を担っている。

⋯ノアさんの能力を、彼に伝えてもいいだろうか?」


ノア「あ⋯はい、大丈夫です」




ノアの同意を得た暁は穏やかに微笑み、懐から取り出した不思議な形をした紙に、何やら言葉を吹き込んだ。





ノア「⋯?それは⋯」


暁「あぁ、これはいわば「伝書鳩」のようなものだよ。
宵月への言伝を運んでもらう」




暁のその行動に、シルフが不思議がるような雰囲気で彼に問う。





シルフ「ねぇ、同族同士なら、テレパシーとかできるんじゃないの?」



その問いに、暁は困ったような顔で苦笑した。




暁「宵月はちょっと⋯性格にクセがあってね。

以前、神通力でやり取りするのが早いだろうと私が言ったら、「そんなのは雅じゃない」って⋯。
ふふっ、まぁ、そういう風情を大切にするやつだよ」


シルフ「あら⋯
じゃあ、その宵月って子は、きっとロマンチストなのね」



クスクスと楽しそうに笑うシルフ。


暁は、シルフの笑いにつられてクスッと微笑んだ後、その紙をフワッと空へ放った。



暁「頼んだよ」





すると、それは白い光の鳥のシルエットとなり─
音もなく羽ばたいて飛んで行った。




一同は、夜空に昇り消えていくその光の鳥を見送り、
夜のティーパーティーを再開するのだった──




































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