No.5 [強い魂]

No.5 [強い魂]
¥555 SOLD OUT
僕の名前はカンタといいます。


子供の頃から目立たない方で、イジメの標的にされていました。

仲間外れにされるのは勿論、バイ菌扱いされたり、死んだ虫を食べさせられそうになったり……


そうしてイジメられる事で自信を失って、更に臆病になっていきました。




―人が怖い。

目を合わせて話す事が出来なかった。
それをしようとすると、震えが止まらなくなる。

対人恐怖症のような状態でした。







そんな苦痛を我慢するばかりの学生生活をやっと終え、社会人としての人生を歩み始めました。


社会に出れば人と話さざるを得ないので、ちょっとずつですが、目を見て話せるようにもなりました。

……でも時々、発作のように昔の臆病な自分が出てきて、体の奥が恐怖で震える事があります。

そして、未だにおどおどしてしまう。


過去の出来事に影響されている、そんな自分が嫌いだった―


















―ある休日。

天然石が好きな僕は、行きつけとは違うお店で、めぼしい原石を物色していた。






と、箱の中でいっしょくたにされている安い石の中の一つが、目に留まる。



形は普通の水晶原石。
しかし……手に取り、よくよく見てみると―









「光、ってる……?」



勿論水晶は光らないし、蛍光性の鉱石でもない。






それを不思議に思っていると、いつの間にか横にいた、赤毛の外国人が話しかけてきた。



「それが光って見えるのかね?」



日本語の発音が完璧な事に驚いた。

ニカッと笑顔を向けてくる彼は、悪い人ではなさそうなので、返事を返した。





「は、はい…
おかしいですよね…光って見えるなんて……」




それを聞いた赤毛の人は何だか嬉しそうだ。



「まぁ、普通に考えれば…だがな」


そう言って手を差し出してきた。
どうやら握手を求めているらしい。


おずおずとその手を握り返す。




「私はアーネストだ!
君の名前は?」

「ぼ、僕はカンタっていいます」

「いい名前じゃないか!よろしくな~(о´∀`о)」

「よ、よろしく…?」



こんなにフレンドリーな人に遭遇したのは初めてで、完全に彼のペースに飲まれている。






「どうしてそれが光って見えるか、知りたいかな?」


「…はい」


「では、ここで立ち話も何だから、店の外に出ようか」




そうして、その不思議な石を買い上げた彼に続いて、店を出た。








近くにある公園のベンチに、並んで座る。





「…さて、先程の石について話をしよう」




僕はコクンと頷いた。





「君はその石を「光って見える」と言ったね?」

「は、はい」





すると彼は満面の笑みを浮かべ、突然僕をハグしてきた。


「っ!?」

「おめでとう!君には運び屋の才能があるぞ!」





[運び屋]…?
何かヤバい響きだ。

もしかして、新手の詐欺か何か…?!






「あ、あの……」

「あぁ、すまんな!
久しぶりにその素質を持つ者を見つけたものだから、嬉しくてつい(^^)」


ハグからは解放されたが、顔がかなり近い。
日本人には慣れない距離感だ。

僕は無意識に後ずさった。






「そ、それで、[運び屋]って…?」

「簡単に言うとだな、君が今日見つけたようなものを、秘密裏に運ぶ仕事だよ」


「……?」


「あぁ、あの石の説明がまだだったな。
あれは、光って[視える]者と、[視えない]者とがいるのだよ。
正確に言うと、肉眼で[見て]いる訳ではないのだがな」




難しくてよく分からない。




「つまり、君が見たのは目の錯覚ではなく、他の者が普段視えていないものを感知する[センサー]が機能して、見えたものなのだ」





今までおかしなものを見たことがなかった僕にとって、その話は目から鱗だった。




「僕、そんなの視えた事なんて…」

「本当はもともと皆が視えるもので、何ら不思議な事ではないのだよ。
ただ、少しきっかけが必要なだけだ」







アーネストさんは宙に目線を向け、少し考え込んでから、またこちらを見た。



「君は、昔から石が好きなのかね?」

「は、はい……
中学生くらいから、集め始めました」



「そうか……
もしかすると、手持ちの石の中に、[感知能力]を解放するのが得意な個体があるのかも知れないな!」


ふむふむ、と一人納得している。




「石に、そんな力が……?」

「あぁ。
ただ、石の力はあくまでも補助のようなもので、万能ではないという事だ。
そこを勘違いして、他力本願になってはならない。
最終的には人間の心持ち、というわけだよ。

君は[視える]のを、無意識に望んでいたのかもしれないな」


「……………」



自分はそんな事を心の奥底で望んでいたのだろうか……





「つまり、裏市場で取り引きされるこの石のように特別なものを、様々な所に届けるのが[運び屋]の仕事だ。

君が適任なのは、普通のものと特別なものを選別できるというのもあるが……
運び先には、[視える]人間でないと、感知できない存在の相手がいることもあるからなのだよ」



その話を聞いて少し怖くなる。




「……そ、それって、幽霊とか、ですか?」

「いいや、幽霊とは違う者達だよ。
怖がるような相手ではないから、安心したまえ!」


そう言って、アーネストさんは僕の背中をバンバンと叩き、オリーブグリーンの瞳をこちらに向けて、ニコリと笑った。





「運び屋、引き受けてくれるかね?
やるかやらないかは、勿論君次第だ」





その[運び屋]の仕事がどんなものか、全く想像がつかない。
でも…
消極的な自分を変えたい。

これは、そのきっかけになるような気がした。





「………やって、みます」


「ありがとう!
仲間が増えて嬉しいよ(^o^)o」


そう言ってアーネストさんはまたハグをしてきた。
どうにも慣れず体が固くなる。







「それではまず、妖精界に行こうか」


すると、僕達の周りが風の渦に包まれた。



「っ!?」


驚く僕に、彼は「大丈夫」というような笑顔を向けてきた。







―少しして、渦が収まる。

さっきまでとは全く違う場所にいた。






「ここが、[妖精界]だ。
[常若の国]、[ティル・ナ・ノーグ]……
様々な名で呼ばれている」


「うわぁ……!」



辺りの美しい景色に、思わず笑みが溢れる。






アーネストは、目を輝かせて周りを見渡すカンタの様子を、優しい眼差しで見ていた。



「君は純粋なんだな」

「え?そ、そうなんですかね…」





二人で笑い合っていると、突然目の前に光るものが現れた。




「この[妖精界]に来られたのは、アタシのおかげよ」



何だか得意気だ。

場所が場所なのできっと妖精だろう、と光が言葉を発した事には驚かなかった。





「あの、ありがとう……
あなたは…?」

「ふふ、風の妖精、シルフよ。よろしくね!
あなた、素直でアタシは好きよ」


「っ……」



[好き]と言われ、何だか照れてしまう。





「シルフ~!
私の事は好きと言ってくれないじゃないかぁ」

「はぁ、面倒ね……
博士とはもう腐れ縁みたいなものよ」

「博士?」




僕が「?」マークを浮かべていると、シルフはため息をついた。



「博士、また言ってなかったの」

「だって、[博士]って名乗ったら、その名でしか呼ばれないのだから仕方ないだろう!
私は[アーネスト]と呼ばれてみたいんだ~(>д<)」


その場で地団駄を踏む博士。



「もう、何よそれ。
歳取り過ぎて子供返りしちゃったの?」



歳を取り過ぎ…?
彼はそんな年齢には見えない。





またまた「?」だらけの僕に、シルフが耳元で彼の本当の年齢を教えてくれた。






「……えっ!?」

「そうなるわよね」



彼女はクスクスと楽しそうだ。





「アーネストさんも……妖精、ですか?」

「いやいや!
私も、君と同じ人間だよ」


彼は白い歯を見せてニカッと笑った。




「博士、そんな年齢じゃ全く説得力が無いわ」



僕もそう思う。




「私は人間ったら人間なんだぁ~(>д<)」


更に地団駄を踏む博士。





シルフは一際大きなため息をついた。


「分かった、分かったから静かにして!
いつからこんな感じになったのかしら、この人。
昔は物静かで知的だったのに」


そう言いつつ、彼女は何だか楽しそうだ。











「さてと…」


落ち着いた彼は僕に手招きをして、木の根本に置いてある、古びた木箱の前に呼んだ。


「カンタ君、こちらに来てくれるかな?」




アーネストさんが箱を開けると―
先程の店で見つけたのと同じような光り方の石が、いくつか入っていた。




「この光る鉱石は[アストライト]と呼ばれていて、裏市場で売買されたりしている。

ちょうど運び屋に任せたい任務があってな。
このアストライトを[白夢製作所]という所に届けるのが、君の初仕事だ」

「…分かりました」



二十個程の色とりどりに光る石、アストライトを、自分のリュックに詰め込む。






それが終わると、博士に紙切れを一枚手渡された。




「これが地図だ」

「…………」



少し不安になってきた。
自分にできるだろうか。


そんな不安を察してか、アーネストさんが大きな手で僕の頭を優しくポンポン、と撫でてくれる。




「初めてだから、ある程度近くまでは送り届ける。
安心したまえ」



そうして僕達は再び風の渦に包まれ、人間界に戻った。





つい先程まで朝だったのに、すっかり夜になり、辺りは真っ暗だ。

アーネストさんによると、妖精界と人間界の時間の早さが違う為、こういう事になるのだという。





僕が手元の紙切れ―地図を凝視していると、それを一緒に見ていた彼が言った。



「その製作所は少し変わっていてな。
地図を持っていても、辿り着けない者もいる。
が、今の君ならば辿り着けるだろう」

「………?」




意味はよく分からなかったが、辿り着ければ問題ないので、深くは聞かない事にした。



「では、幸運を祈るよ」



そう言ってニカッと笑ったアーネストさんは、風の渦に包まれて姿を消した。












―それから、数十分程歩いた。


初めての場所だった為、周りを都度確認しながら進んでいると―
道の少し先に、誰かがバイクを止めた。






「………!」



警察…?!
何でこんな時に限って……






「どうしたんだ、そんなにキョロキョロして」



声を掛けられた。

だいたい警察官に話しかけられたら、何もしてなくても緊張する。
運び屋になりたての僕は尚更だ。

緊張で汗が止まらない。




「荷物検査させてもらっていい?」




荷物検査だけは避けたかった。

よくよく考えてみたら、他の人には光っているのは視えないはずだから、ただの石を持ってるってだけの話なんだけれど……

いてもたってもいられず、走って逃げ出してしまった。


しかしリュックを掴まれ、アストライトが一つ転がり落ちた。
ジッパーが開いていたのか……

間抜けな自分にイラついた。



警察官が石を手に取る。


……落ち着こう。
この人にはただの石にしか見えないから、大丈夫……








「……何だこれ。光ってる?」

「っ!」



何で、視えてるんだ……


思わず警察官の手からアストライトをひったくった。






と、そこにアーネストさんが現れた。
……助かった。

こっそり見守ってくれていたのだろうか。





僕が胸を撫で下ろしていると、アーネストさんが警察官に言った。



「説明しても分からないと思うから、とりあえず私達と一緒に来てもらおう」





そうして僕達三人は、風の渦に包まれて妖精界に来た。









アーネストさんの話だと、警察官の彼もまた[運び屋]の素質があったようだ。


話を一通り聞いた彼は、運び屋を引き受けてくれるらしい。


これで、僕と彼―
ノザキさんは、ほぼ同期という事になる。
何だか嬉しいような…むず痒い気持ちだ。












ノザキさんを見送ったアーネストさんが、振り向いてこちらを見た。





「さぁ、君には運び屋の仕事に戻ってもらおうかな」



博士がそう言うと、周りが風の渦に包まれ、人間界の先程の場所に戻った。




「本当は目的地まで連れていってあげたい所だが……
初仕事だ。練習がてら、何とか自力で辿り着きたまえ!
ではな(^-^)/」


そう言って、彼はまた風の渦と共に姿を消した。






「………」



一枚の紙に書かれた地図を頼りに、僕は再び歩き出す。
















―それからまた一時間程歩いて、ようやくそれらしき所に辿り着いた。





「ここ、かな……」




辿り着いた先は、年期の入った建物だった。

ビャクム…セイサクショ?だったっけか…




僕は、深呼吸をしてからドアをノックした。

鉄製のドアだからか、ノックが建物の中に響いているのが分かった。










「はい」



少しして、男性か女性かよく分からない人物が、ドアを開けて顔を出した。






「あ、あの………
僕は、運び屋です」

「あぁ、運び屋さんでしたか!待っていました。
私は所長のノアと申します。
どうぞよろしくお願いします(^^)」

「僕はカンタっていいます。
こちらこそ、よろしくお願いします」

「では、こちらにどうぞ」



ノアさんに促され、製作所内に上がらせてもらった。










「っ!」


中に入って気付いた。

ノアさんの隣に、二本足で立つ大きい猫のような生き物がいた。
しっかり服まで着ている。





「…………」


初めて見る謎の生物を思わず見つめていると、ジロッと睨まれた。



「何だ」

「いっ、いえ、何も…」



喋った事には驚かなかったが、鋭い視線を向けられ萎縮してしまう。





「こらこらロカさん、お客さんを睨まないで」


それに気付いたノアさんがすかさずフォローしてくれる。




「…すみません」


軽く叱られシュンとした彼は、尻尾がダラリと下に下がった。
やはり猫のようだ。




僕の緊張を和らげる為か、ノアさんは明るい声で話し出した。


「では、確認させて頂きますね!」




そう言って、僕が運んできたアストライトを一つずつ手に取りひとしきり確認した後、こちらを見てニコッと笑った。





「確かに受け取りました!
ありがとうございます」

「あ、はっ、はい…」



思わずいつもの発作のような癖で、緊張が表に出ておどおどしてしまった。
目を合わせられない。





「………」



ノアさんは、何か言いたげな雰囲気だ。




「……………っ」



心配そうに見つめられているようで、更なる緊張からか身体が震えて汗が出てきた。









カンタはそれきり、口をつぐんでしまった。

その理由は、ノアの隣に立っているロカだ。


彼は来客があると、常にノアの側にいるようにしている。
万が一の事がないよう警戒しているのだろう。
番犬ならぬ、番猫状態だ。

しかし彼は終始無言なので、かなり威圧感がある。






「………」

「……………」



「……ロカさん、ちょっとカンタ君と二人で、話がしたいんだけど…」


「……分かりました」




彼は特に理由も聞かず、製作所の奥に戻って行った。







「あんな感じだけど、悪い子じゃないんだ。
気にしないで下さいね」

「は、はぁ…」


無言の圧力から解放され、ほっとした。










そうして二人になり、製作所玄関前の階段に並んで腰をおろすと、ノアさんはポツリと話し出した。





「……私、子供の頃、ずっと独りでした」


「…そう、だったんですか…」


「仲間外れにされたりして、なかなか馴染めなかった。
私が変わり者だからだったんだけどね」



「人と目を合わせるの苦手だったよ」と困ったような顔をして、ノアさんは笑みを浮かべた。





「…………」




僕はなぜか「この人になら、話してもいいかもしれない」と思えて……

自分がされた事、苦しい思いをした事―
今まで誰にも話した事がない程、全部打ち明けた。








時折頷きながら、話を静かに聞いていたノアさんが、優しい微笑みを浮かべた。





「博士とシルフから聞いたんだけど……
人間って、生まれてくる前に、今回の人生でどんな経験をするか、ある程度決めて生まれてきてるんだって」



そして、僕の目を真っ直ぐ見て続けた。




「私は、大変な経験を選んで生まれてきた人は[強い]、って思う」



「…強い……?」



「だって、楽な選択肢もあったのに、経験を積むために敢えて大変な方を選ぶって、強くなければできない事だよ?
今の自分からしたら納得いかないし、「何でそんな試練を選んだんだ」って怒りたくなるかもしれないけど…」



「…………」


「だから、自分にもっと自信を持っていいと思う。
辛い事があっても、今ここにちゃんと生きてるってだけで、すごいんだから」








今までそんな風に言われた事なんて無かった。


[イジメられている自分が情けない]って思ったけど、勇気を振り絞って、親にそれを打ち明けてみたら……
「おどおどするお前が悪い」と言われ、
先生に相談しても「あいつらは「イジメなんてしてない」って言ってるんだよなぁ」と、相手にされなかった。



イジメられる自分が悪いんだろうか。

そう思うようにすらなっていた。



―勿論、イジメる側が悪い。

そして大人に相談しても無意味というわけじゃない。
むしろ、できれば助けは外部に積極的に求めるべきだ。

ただ、場合によっては、解決どころか悪化する事もある。
子供の世界の問題を、大人が解決できるとは限らないから。







と、ノアさんはニコリと笑ってこちらを見た。




「私は、独りだった時の経験があって、むしろ良かったと思ってるよ」


「………僕はそうは思えません。
とても、苦しかったし、自分が情けなかった…」



昔の記憶が蘇り、膝の上で拳を握って俯く。






と、僕の拳の上に、ノアさんが手のひらをそっと重ねた。



「………その経験のおかげで、こうやってあなたと話ができたから。

カンタ君ほど酷い事はされてないから「分かる」なんて、おこがましい事は言えないけど……
その気持ちを感じる事はできる。
これは、似たような経験がないとできないから」


「……………」



俯いていた僕は、自分の拳に重ねられたノアさんの手を見つめていた。





「だからあなたも、もし、同じような状況で苦しんでいる人が側にいたら―
励ましたり、力になったりできる」

「………………
僕なんかに、そんな事ができるでしょうか………」




弱音を吐く僕に対して、ノアさんは「もちろん」と言うように大きく頷いた。




「その苦しかった[経験]は、あなただけの財産だし、力になる。

……でも、やっぱり嫌なものは嫌だし、わざわざ苦しい方を選択しなくてもいいんじゃないかとも思う。
せっかくなら楽しかった[経験]が多いに越した事はないけど…
「経験は一番の冥土の土産になるぞ!」って、博士が言ってたし」


苦しい思いをしたくないのはみんな同じだよね、と楽しそうに笑う。
きっと、あの賑やかなアーネストさんを思い出しているのだろう。






ひとしきり笑った後、ノアさんは話し出した。




「いくら他の人が凄く見えたって、批判してきたって、あなたの人生はあなたのもので、その物語の主役ができるのは、あなただけだよ。
そして、これから先の物語を創っていくのも、自分自身。
だから、脇役なんかになる必要はない。

それは裏を返せば、自分以外の誰かが突然現れて、自分の物語を何とかしてくれるわけじゃないし、他の人の物語―
人生に、無理矢理入っていったり、他の人の物語の主役になろうとしたり、壊したらダメって事。

そして、最後は自分の気持ちが一番大事だよ。
人からどう思われるかより、自分がどうしたいか、どう振る舞うかが肝心だと思う。

行動すれば、今からでも、いくらでも変われる。
卑屈になってても何も始まらないから」




僕とは違う、強い意思を持った瞳がこちらを見ていた。


僕もいつか、こんな風になれるだろうか…

いや、なれるかもしれない。
何かができそうな気がしてきた。






考え込んでいる僕に、ノアさんは、はにかんで申し訳なさそうな顔をした。



「何だか、当たり前の事を偉そうに語ってしまって……ごめんなさい」


「……面と向かって、そんな話をしてもらったのは初めてです。
でも良かった。元気をもらえました。
ありがとうございます。

僕も、強くなります」





それを聞いてノアさんは安心したのか、大きく頷いて微笑んだ。



「これからもいろいろあると思うけど……
運び屋の仕事、楽しんで!
よかったら、またここに来て下さいね」


「はい!」









そうして僕は、ノアさんに見送られながら、製作所を後にした。

心なしか、背筋がピンッと伸びる。


みんなそれぞれ辛い事はあるけど、ちゃんと[今ここ]に、自分として懸命に生きてる。
当たり前のようでいて、実はすごく大事な事なのかもしれない。


僕も、誰かに元気をあげられるように……
後ろばかり振り返らないで、前を―
未来を向いて生きて行こう。

そう強く思った。
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